| 理想の看護婦像を求めて(2) |
| 前回は、看護婦の質の問題について、若干私見を述べさせていただいた。今月は、私なりの“理想の看護婦像はどういうものか?”記してみたい。 |
| 私は基本的に、当院に所属しながら看護学校へ通う、新入スタッフには、基本的に次のことを守れる看護婦に育つよう、教育内容、スケジュールを考え指導しているつもりである。 |
| 1.来院された患者さんのその日の来院目的をよく理解し、それに沿った看護をする。決して、機械的にながす診療看護をしてはいけない。 |
| 2.院内で入手した、患者さんの個人データを外部に絶対に漏らしてはいけない。 |
| 理想の看護婦像は、各人それぞれの思いがあるだろうが、私は少なくともこの二つを守れる、あるいは守ろうとする姿勢を持った看護婦は信頼できると考えている。 |
| しかし、たったこの二つの基本項目であるが、いまこの二つのことが実際に守れている看護婦が、日本全国にどれくらいいるかといわれると「う〜ん」と考えざるをえない。 |
| まず一つ目の『患者さんの来院目的を知り、それにあった看護をする』は具体的にどういうことであるかというと、初診の患者であれば、まず十分な問診をとること、特に循環器では、問診の出来、不出来によって診断が左右されるほど大切なことなのである。問診が上手に取れる看護婦は、コミュニケーションも上手である。 |
| 当院では、新人は1年目の終わりか2年目の初め頃より、問診をとらせるようにしているが、日頃、先輩の問診をみていても、いざ自分でしてみると四苦八苦している。 |
| 私はその場で問診内容をチェックし、足りない部分は再度聞きに行かせるか、あるいは担当看護婦を側におき、問診のやり取りを側で筆記させ、後でリーダー看護婦の指導のもと、もう一度きちんとした問診を提出させるようにしている。これを繰り返すことにより、短時間に患者さんの来院目的を知ることができるようになるのである。 |
| 再診の患者さんもしかりである。再診の患者さんのカルテをまず読み、何の病気で通院しているかを知ることは、これはものすごく大事なことである。にもかかわらず、入院していればともかく、外来レベルで最近の病態を知って応対するというのはとても難しい。 |
| その理由の第一は、日本のいまの医療制度にあり、一人一人に30分も1時間も時間をかけていると、その病・医院そのものが経営困難になってしまうからである。では、できるだけ多くの患者さんが、ドクターの診察を受け、なおかつ現在の医療体制のなかで、何が患者さんの望みかを知り、(よく説明してほしい、よく診てほしいなど)かなえようとする時、看護婦の役割はさらに重要になる。 |
| 再診の患者さんは、いろいろなパターンがある。すでに症状が安定していて、経過を診ていくだけの人、前回検査をしてその結果を説明する必要がある人、あるいは調子が悪くなって来院した人など、同じ再診でも、その診療内容はさまざまである。 |
| いま5分間診療、3分診察と避難されながらも、根本的にいまの医療体制が変わらない限りは、診療時間を延ばすことはできないかも知れないが、その5分間の質を濃くしていくことは、いまの状態でもできるのではないかと思う。 |
| 一見、同じような診察にみえても、患者さんのその日の来院目的、ここ最近の状態、あるいは各人の性格などを知って患者さんと向かい合っているか、何も考えずに流れ作業的に対応するかは全く違う。患者さんの体の変化の予兆を早くつかめるのはどちらか、明白である。 |
| しかし残念ながら、これは心構えの問題で、何事もなければなかなか回りに気づいてもらえないことが多い。気づいてもらえなくても、看護婦として、医療人として忙しいなかでも、努力していきたいものである。 |
| 二つ目の守秘義務、これは各人によって知られたくない範囲や部分が違う。このことをきちんと守ってあげて、初めて正確な問診がとれるのである。 |
| 医者だけが守秘義務を守っても、ざるに水である。病・医院のスタッフ全員に、その重要性をしっかり理解してもらえば、患者さんは安心して何でも話すことができる。病気というのは、体だけの問題だけでなく、その憎悪、軽快に精神的なものも大きく関与することがあるのである。 |
| その他にも、看護婦に要求されるものは、いろいろとあるだろうが、私はこの二つができる看護婦は、技術も自然に向上するし、人間としても成長していけるのではないかと思っている。そして、よりすばらしい看護婦になってほしいと思っている。 |
| 1995年6月11日 Medical Academy News 医療春秋 掲載 |